日本人の視力の低下は、何十年も前から進行しているといわれてきました。視力が0.1未満の強度の近視の人も、かなり増加してきています。しかも、その近視が強い人ほど、高齢になるにしたがって緑内障や網膜剥離が発症する確率が高くなります。
なぜ、強度の近視の人ほどこういった目の病気になりやすいのか、その原因については、緑内障はまだ医学的にはっきりわかっていません。一方、網膜剥離のほうは、ある程度わかってきているようです。網膜はとても薄くて破れやすいのですが、網膜に弱い部分があると、そこがどんどん薄くなって、終いには穴が開いてしまいます。
例えば布が弱くなるとその部分は薄くなり繊維のあみが見えてきますが、網膜もこのような状態になります。特に近視の人は眼球が大きく網膜が引きのばされているために薄い部分ができやすく、近視の人に多い状態なのです。穴ができると、そこから硝子体内の水分が網膜の下にしみ込み網膜が剥がれていきます。
視力には4つの状態があって、正視、近視、遠視、乱視といいます。これらは、眼球に入ってくる光と焦点の関係によって決まります。角膜から水晶体や硝子体を通して入ってきた光が像を結ぶのが網膜です。結ばれた像が視神経を刺激してそれが脳に伝わった時にものが見える状態になります。正視というのは遠距離からの光がちょうど網膜で像を結んだ状態で、遠くのものも近くのものもはっきり見ることができます。
近視は、近距離からの光は網膜で像を結び遠距離からの光は網膜より手前で像を結ぶ状態で、近くのものは見えるけれど遠くのものがはっきり見えません。遠視は、遠距離からの光を網膜より後ろで像を結ぶ状態で、近くも遠くもはっきり見えません。乱視の場合は、遠距離と近距離の両方からの光が網膜に像を結びにくい状態で、どこもぼやけて見えます。
近視については、水晶体の厚みを変えるなど大事な働きをする毛様体(もうようたい)の血流が悪くなり栄養の補給がうまくいかなくなることと近視が進行するのに関係があることがわかりました。
つまり、毛様体の血管の血流を良くすることで、近視の予防や近視の進行を緩やかにすることができるのです。また、目の栄養状態が、近視を促進させてしまうことに影響することもわかっています。
網膜の老化が進行することでも視力が低下します。このように、視力が低下することに血流や栄養状態が関係あるのは、これらによって目の組織に対する活性酸素の影響が違ってくるからです。ですから、活性酸素によって目の組織が酸化されてしまうのを予防するには、抗酸化物質であるカロテノイド、その中でも特に、目の組織に豊富に含まれているルテインやゼアキサンチンを普段から摂取しておくことが大切であり、視力が低下するのを防いだり改善するのに役立つのです。