加齢黄斑変性症と生活習慣

目の網膜には光を識別する光受容体という視細胞があり、この光受容体は、黄斑部に特に多く存在しています。その数は何百万個ともいわれます。その黄斑部が過酸化脂質によって変性すると、視覚の対象となる物の輪郭や色、大きさなどが本来のものと変わって見えたり、曲がったように見えたり、止まっている物が動いて見えたりします。黄斑部に異常をきたし、このように視力障害が起きるのが黄斑変性症の症状です。そして黄斑変性症は年齢を重ねるに連れて発症しやすくなり、高齢者は、放置しておくと失明の危険性がある加齢黄斑変性症にかかる人が増えています。

加齢黄斑変性症は、はじめに片方の目に症状が出て、痛みを感じることなくゆっくり進行していき、やがて両目に及びます。初期症状では、視界がぼやけ、線がゆがんで見えたり、視野の真ん中あたりに黒点が見えたりします。その周りの可視部は守られていますから、物を見ることはまだある程度できます。しかし、文字の読み書きや人の識別、自動車の運転などは難しい状態となって、日常の生活に支障が出てきます。それでもなお、明るい太陽の光を受け続けていると症状が悪化し、暗い場所から明るい場所への切り替えがとても大変になっていきます。

タイプは、萎縮型=ドライタイプと、滲出型=ウェットタイプのふたつがあります。一方の萎縮型は、老廃物が黄斑部に蓄積されることで発症するといわれています。年齢を重ねるに伴い黄斑の光知覚細胞がゆっくりと変性していくことと関係しているのですが、原因についてはじゅうぶんには解明されていません。物が見えにくくなるのがとても緩やかなので、自分ではなかなか気づかないことが多いようです。もう一方の滲出型は、溜まった老廃物を吸収しようとして、網膜の外側にある脈絡膜から新たに血管が生まれることが発端となり発症します。こちらは症状の変化が速く、発症してから短い期間で目の異常や視力の減退が進行します。

日本で患者数が増加してきている主な原因は、食生活の欧米化が進んだことや自然環境の悪化などが考えられます。食物に含まれる抗酸化物質が不足している人ほど、加齢黄斑変性症の発症する確率が高いことがこれまでの研究でわかっています。

活性酸素を発生させ、抗酸化物質を減少させてしまう喫煙については、たばこを1日に1箱以上吸う人が加齢黄斑変性症にかかる確率は吸わない人の2倍以上も高くなり、禁煙したとしても、その影響は10年以上続くことが明らかになっています。また、アルコールについても、ある程度以上の量を摂取すると体内の抗酸化物質が減少してしまいますので、目の障害にもなる可能性があります。

このように私たちの生活習慣の悪化が、加齢黄斑変性症の発症率を高めているのです。

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